JPCZによる大雪停電と業務停止リスク
― 医療機関・研究施設・法人が整理すべき判断材料 ―
JPCZがもたらす停電の特徴
JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)は、日本海側を中心に短時間で集中的な降雪をもたらす気象現象です。
特徴と影響は以下の通りです。
- 数時間で数十cm単位の積雪
- 水分を多く含んだ重い雪による着雪被害
- 倒木・電線断線による広域停電
- 交通麻痺による復旧遅延

ここで問題になるのは、大雪による停電は「停電から回復するまでの時間が読めない」点にあります。
数時間で復旧するケースもあれば、地域によっては数日電気がこない地域もあります。
医療や研究施設における保管設備の温度逸脱と信用リスク
冷蔵・冷凍設備の停止
- ワクチン保管:2~8℃
- 冷凍製剤:-20℃
- 研究用フリーザー:-80℃
停電時、機種や開閉頻度にもよりますが、
4~8時間で温度上昇が始まるケースがあります。
想定損失例
- ワクチン
- 特殊検体:金額換算ができない
- 再接種対応・再予約対応の人件費増加
単なる物品損失だけでなく、
医療安全報告・信頼毀損という二次的影響が発生します。
研究機関:研究資産の消失
-80℃フリーザー内の長期保存試料
- 治験関連サンプル
- 数年単位で蓄積した研究データ
停電12時間超で不可逆的劣化のリスクが高まります。
研究資産は保険で補填できない場合も多く、
時間と信用の損失が最大のダメージとなります。
ITインフラ停止による機会損失
停止機器対象
- 社内サーバ・NAS
- クラウド接続用ルーター
- 決済端末
- 生産設備制御機器
機会損失の例
- 企業 × 丸1日停止(2日以上の可能性もあり)
- 顧客対応遅延による契約機会損失
- 瞬断による機器故障リスク
ちなみに、ビジネスフォンは停電時に使えません。
ビジネスフォンと呼ばれる内線・外線の機能が搭載され、内線電話装置のある主装置には電気供給が必須です。(主装置にバッテリーが内蔵されている機種もあります。その場合はバッテリー給電により使用ができます。)
※黒電話の時代は、モジュラージャックまでの電気の供給責任はNTT側にありました。
通常の電気配線とは別回路だった為、「電話だけは停電でも使える」といった認識が広がり、停電でも使えると思われていました。
JPCZ停電では、瞬断の繰り返しが発生することもあり、
完全停電以上に機器トラブルを招く場合があります。
BCP視点で整理すべき3点
1. 守るべき設備の特定
- 冷蔵・冷凍機器
- 検体・ワクチン保管設備
- ITインフラ
- 監視・警報システム
2. 許容停止時間(Recovery Time Objective:目標復旧時間)
- 何時間まで許容可能か
- 再取得可能か否か
3. 想定損失の概算
- 直接損失(物品・試料)
- 間接損失(信用・契約)
- 復旧対応コスト
設備導入の是非は、これらの要因を複合的に整理しながら判断される事が望ましいです。
停電対策は「設備選定」ではなく「リスク判断」
非常用電源は万能ではありません。
しかし、
- 何も備えがない状態
- 停止時間を想定していない状態
は、最もリスクが高いと言えます。
重要なのは、
自施設の停止許容時間と損失額を可視化することです。
大雪による停電は、業務資産が継続できないリスクへ
大雪で停電になれば、日常の業務が不便になる次元ではなく、業務資産の継続性の問題として考えたほうが無難です。
医療・研究・法人にとっては、
- 温度逸脱
- ITインフラ停止
- 信頼毀損
という形で、直接経営に影響します。
まずは、守るべき設備と許容停止時間の整理から始めてみてはいかがでしょうか。



