研究室・培養室・サーバールームでのドライアイス使用と停電対策
2025年10月、徳島大学研究棟の低温培養室において、大学院生が倒れて死亡する事故が発生しました。
この事故について、徳島大学は公式発表で以下の内容を公表しています。
低温培養室では、10月19日に実施予定だった計画停電に備え、前日の10月18日から試薬の保冷目的でドライアイスを設置
設置されていたドライアイスは約31kg
ドライアイスが気化し、二酸化炭素(CO₂)が室内に滞留
室内の酸素濃度が低下し、酸素欠乏につながった可能性がある
(出典:徳島大学公式発表/報道各社)
という調査結果が示されました。
なぜ停電でドライアイスが必要だったのか。
停電時に冷蔵庫・保冷庫の温度管理が困難になるため、それを補う目的で使用されたからです。
ドライアイスによる保冷は、現在も一般的な応急対策として広く活用されています。食品の冷却用途でも馴染み深い方法です。
研究室・培養室・サーバールームは「密閉性が高い空間」
研究室・培養室・医療検体室・サーバールームなどは、
- 温度・湿度・微生物の管理
- 粉じん対策
- 精密機器の安定稼働
- 外気の影響を防ぐ環境維持
といった目的で 高い気密性 を持つよう設計されています。
通常は空調により空気の循環が保たれていますが、停電が起きると空調・換気が停止し、空気が入れ替わらない密閉空間になりやすい のが特徴です。
この状態でドライアイスを使用すると、気化した二酸化炭素(CO₂)は逃げ場がなく、室内にとどまりやすくなります。空調や換気が止まった密閉空間では、わずかな時間でも空気が循環せず、酸素濃度が低下していく可能性があります。
二酸化炭素は無色・無臭で、人の感覚ではほとんど気づくことができません。
見えず、におわず、刺激もない・・・すると、変化に気づかないまま濃度が上昇してしまうことがあります。

CO₂濃度と人体への影響
二酸化炭素は「無色・無臭」で、感覚では気づけない
二酸化炭素(CO₂)は無色・無臭の気体で、においや刺激がありません。
そのため、人は 濃度が上昇しても異変に気づきにくい という特徴があります。
さらに、CO₂は空気より比重が重く、密閉空間では床付近など低い位置に滞留しやすい性質があります。
CO₂濃度と人体への影響(参考値)
| CO₂濃度 | 人体への影響 |
|---|---|
| 約0.04% | 通常の大気 |
| 1〜2% | 軽い息苦しさ |
| 3% | 呼吸困難、頭痛 |
| 8〜10% | 意識障害、失神のリスク |
| 10%以上 | 短時間で生命の危険 |
密閉された研究室や培養室、サーバールームで大量のドライアイスを使用した場合、
本人が気づかないうちに危険な濃度に達する可能性があります。
高濃度の二酸化炭素は、単なる「酸欠」の問題ではなく、体に直接作用する「有害」なガスとなります。濃度が上がるほど呼吸困難や意識障害を引き起こし、短時間でも重大な事故につながる可能性があるのです。
応急保冷としてのドライアイス。空間に応じたリスク判断を
ドライアイスは非常に強力な保冷手段ですが、安全に使うためには使用環境を見極めることが不可欠です。
厚生労働省「安全情報データベース」には、ドライアイス使用時に二酸化炭素が滞留し、酸素が低下したとみられる事例が複数掲載されています
厚生労働省「安全情報データベース」に掲載されている関連事例
倉庫内の保管庫内でドライアイスを収納する作業で酸素欠乏症に罹る
保冷庫内でドライアイスを使用中、気化した 二酸化炭素(CO₂) が庫内に滞留し、酸素が低下したと推測される事例。
冷却設備の故障や温度維持のため庫内にドライアイスを設置していた。
ドライアイスから気化した二酸化炭素により急性二酸化炭素中毒
冷却設備のトラブル時に代替としてドライアイスを使用し、二酸化炭素(CO₂)が上昇した可能性が示された事例。
ドライアイスによる酸素欠乏
ワゴン車にドライアイスを積載して運搬していた際、密閉状態の車内に 二酸化炭素(CO₂)が滞留した事例。
冷凍庫の扉を閉めてドライアイスを散布中に、扉が開かなくなり酸素欠乏となる
冷凍庫・保冷庫の故障や停電時にドライアイスを設置したところ、庫内環境が不安定になった事例。
保冷庫内におけるドライアイスの気化による酸素欠乏災害
発泡スチロール箱に入れたドライアイスを保冷庫に置いたところ、二酸化炭素(CO₂)が滞留し酸素濃度が低下した事例。
ワゴン車でドライアイスの運搬作業中の酸欠
車両内でドライアイスを積載していた際、気化した 二酸化炭素(CO₂)が車内に滞留して酸欠状態となった事例。
また、葬儀場でも棺内のドライアイスが原因となる二酸化炭素中毒が発生しており、消費者庁からも注意喚起がされています。
棺内のドライアイスによる二酸化炭素中毒に注意
保冷庫内でドライアイスを使用中、気化した 二酸化炭素(CO₂)が庫内に滞留し、酸素が低下したと推測される事例。
冷却設備の故障や温度維持のため庫内にドライアイスを設置していた。
これらは「ドライアイス=危険」という意味ではありません。
密閉空間では換気が不十分になりやすく、長時間利用ではガス管理が必要であること、
人の立ち入りを適切に管理する必要があることを示しています。
停電時でも設備を止めない「蓄電池」という選択
ドライアイスは応急保冷として有効ですが、研究室・培養室・サーバールームのような 空調停止がリスクになる空間 では、
設備をそのまま稼働させる方法のほうが安全性と安定性に優れます。
その選択肢が 蓄電池によるバックアップ電源 です。
蓄電池導入のメリット
- CO₂を発生させないため安全
- 温度・湿度・空調を維持できる
- 冷凍庫・培養装置・サーバーを停止させない
- 作業者の安全確保にもつながる
- 繰り返し使用できる
近年、停電時に冷凍庫・実験機器・培養装置を 停止させずに運転し続ける 方法として、蓄電池によるバックアップが注目されています。
■ 蓄電池を利用するメリット
- 二酸化炭素を発生しないため安全性が高い
- 温度を一定に保ちやすく、品質が安定
- ドライアイス補充の手間が不要
- 停電中に扉を開けても復帰しやすい
- 設備を止めずに作業を継続できる
- 冷凍庫・保冷庫・インキュベーター・サーバーなど用途に合わせて容量を選べる
「必要な時間だけ動かしたい」「部分的にバックアップしたい」といった要望にも対応できます。
計画停電・点検には「レンタル蓄電池」という現実的な方法
すべての施設で常設が必要とは限りません。
- 年に1〜2回の法定点検
- 電源切替工事
- 新設備導入時の一時停止
こうした 期間が決まっている停電 には、
蓄電池を「レンタル」で導入する方法が合理的です。
レンタルのメリット
- 必要な期間だけ使用
- 初期コストを抑えられる
- 設置・撤去の手間が少ない
- 毎年同じ時期に繰り返し利用できる
実際に、研究施設・医療関連施設・サーバールームのお客様の中には、
毎年同じ計画停電に合わせてレンタルを利用されているケースもあります。
より安全で確実な停電対策のために。安全のために必要な認識と。
- ドライアイスは応急的な保冷手段として非常に有効
- ただし、密閉空間では酸素低下を招く事例が報告されている
- 停電時の温度維持は「冷やす」だけでなく「電源を確保する」選択肢がある
- 蓄電池は設備を停止させず、室内環境も安全に保てる
- 計画停電にはレンタル蓄電池が効率的
目的に応じて、
・応急保冷(ドライアイス)
・安定運転(蓄電池の導入)
・一時導入(レンタル蓄電池)
を組み合わせることで、より安全で確実な停電対策ができます。
