超低温フリーザー(-80℃設定)は、停電後わずか20〜30分で危険温度に到達します。
ワクチンや研究試料を保管する場合、温度逸脱は重大なリスクとなります。
停電は数十分で試料の損失につながります。
温度上昇の実測データを使って、必要なバックアップ容量および設計上の注意点を述べます。
超低温フリーザーは停電で何分持つのか
実測データでは以下の通りです。
※試験条件:周囲温度15℃、扉未開閉状態
- -70℃ → -60℃:約20分
- -70℃ → -20℃:約150分(約2時間34分)

電気が停止した直後から20~30分間、急激な温度変化が始まります。-55℃あたりから温度の上がり方は緩やかになり、150分で-40℃以上に達します。
米国国立衛生研究所(NIH)によると、平均的な超低温フリーザーは停電や故障時があれば、数時間で危険温度に達すると指摘しています。
アラーム発報後、研究者に残された時間は数時間に限られる
出典:NIH ULT Freezer Predictive Monitoring
国内でも豪雨による停電でワクチン廃棄が発生した事例が報告されています。
ワクチン・検体保管における停電リスク
医療機関や研究施設では、以下のような温度管理対象が存在します。
・RNAワクチン(-70℃保管)
・細胞・組織試料
・DNA/RNA抽出試料
・血液・検体
温度が許容レベルを逸脱した場合、対象は再利用不可となりかねません。
多くのフリーザーは停電時に停止し、復電後は自動で再起動します。
温度・電源履歴のロガー機能が搭載されていなければ、異常履歴を把握できない事例が過去に多数報告されています。
実際に、豪雨による停電でCOVID-19ワクチンが廃棄対象となった事例を受け、導入を決定された施設もあります。
突入電流とバックアップ容量の設計
超低温フリーザーはコンプレッサー始動時に、定格消費電力を大きく上回る始動ピークが発生します。
このピークは停電復帰時だけでなく、サーモ制御による再始動のたびに繰り返し発生します。
超低温フリーザーのバックアップ設計では、
「出力(kW)」と「容量(Wh)」を分けて考えることが重要です。
Wh容量だけでなく、瞬間最大出力(kW)およびサージ耐性がこのピークを満たしていることを前提に選定します。
①始動ピーク耐性(Power設計)
超低温フリーザーはコンプレッサー始動時に、
定格消費電力を大きく上回る瞬間的な始動ピークが発生します。
例:
定格消費電力:8A(800W)
想定始動電流:約40A(機種依存)
40Aは約4,000W相当となるピークが発生し、ピークは停電復帰時だけでなく、
運転中はサーモ制御による再始動のたびに繰り返し発生します。

したがってバックアップ電源は、この数分に1度発生するピークを十分に満たしている必要があります。
Wh容量だけで選定すると、起動できないという事態が発生します。
②継続運転容量(Energy設計)
次に必要となるのが、停電中にどれだけ運転を維持できるかという容量設計です。
必要容量(Wh)は以下で算出します。
必要容量(Wh)=
定格消費電力(W)× 目標バックアップ時間(h)× 安全係数
例:
定格消費電力:600W
目標バックアップ時間:2時間
安全係数:1.2
600 × 2 × 1.2 = 1,440Wh以上
この値は最低必要ラインです。
扉開閉、周囲温度、温度復帰時の負荷増加を考慮すると、実際にはさらに余裕を持たせる設計が推奨されます。
③再始動のピーク耐性(Restart設計)
フリーザーの特性を理解すれば、2台以上を接続する事も可能ですが、その時に注意すべきなのもまた
復電直後の一斉始動=複数台接続時の同時ピークです。
複数台の機器を接続すれば、それらが同時に発生する可能性を考えた設計が必要であるとわかります。
・同時稼働に必要な台数
・機種ごとの始動ピーク
を前提にシミュレーションを行い、ピークが重なるった時に耐えられる構成とすることが重要です。
超低温フリーザーの停電対策では、「容量が大きい」だけでは不十分です。出力設計と容量設計を分けて評価することが、機器保護の要となります。
超低温フリーザーのバックアップ時間(実測例)
以下は実測に基づくバックアップ時間の一例です。
(試算条件:OA-3000B8使用、単体接続)
| フリーザー/冷蔵庫 | ![]() PHC社 MDF-PJ | ![]() EBAC社 UD-80W74NF | ![]() 日本フリーザー社 CVF-78HC(VT-78同機種) | ![]() カノウ冷機社 LAB8s |
|---|---|---|---|---|
| バックアップ時間 | 43 時間 | 35 時間※ | 39 時間 | 45 時間 |
-80℃対応の超低温フリーザー(パナソニック製 MDF-C8V1-PJなど)を接続した場合、43時間以上(約2日間)の連続運転が可能であることを確認しております。
医療・研究機関での導入事例
導入例:
・大学・病院研究室:施設内非常用電源の法定点検停電時の対策
・製薬企業・食品CRO研究所:BCP対策として機器単位で独立構成
・研究機関・治験施設:検体保管設備の保護
※構成は機種・設置条件により異なります。
超低温フリーザーの停電対策はBCPの要
超低温フリーザーの停電対策では、「容量が大きい」だけでは不十分です。出力設計と容量設計を分けて評価することが、機器保護の前提となります。
型番と台数をご連絡いただければ、必要容量および始動ピーク耐性を試算し、バックアップ可否をご案内いたします。
よくある質問
Q. 超低温フリーザーは発電機で代用できますか?
A. 始動ピークに対応できない場合が多く、単体発電機では不安定になることがあります。
Q. 既存フリーザーに設置できますか?
A. AC100V仕様であれば設置できます。
Q. 複数台接続は可能ですか?
A. 同時始動ピークを考慮したうえで条件を満たせば可能です。
Q. 超低温フリーザーは停電で何分持ちますか?
A. 80Lクラスでうすと30時間以上のバックアップが可能です。(条件により差があります。)





